シナリオとは
1. 研究プロジェクトの概要
本研究では、定量的な科学技術評価に基づいて明るく豊かなカーボンニュートラル社会の未来像への道筋を描く複数の定性的シナリオ・ナラティブ(ストーリーライン)と統合評価モデルなどに基づく定量的評価体系を開発します。本研究は全体統括グループに加えて技術シナリオ評価グループ、定量シナリオ解析グループ、社会シナリオ対話グループ、統合シナリオ構築グループの4チームからなり、コストエンジニアリング、ライフサイクル評価、統合評価、社会技術分析などの手法を積み上げ、ワークショップなどを経て、総合知に基づくシナリオ開発を目指します。これにより加速的な移行戦略を創出し、日本のカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
2.1 目指す社会像
低炭素社会実現のための社会シナリオ研究の目的、目標のひとつに2050年の目指す社会像の提示があります。一般に二酸化炭素(CO2)の排出の元となる石油や石炭の消費を最小限にし、森林や人工的なCO2の固定化や変換により大気中のCO2濃度を一定に保つカーボンニュートラル社会は、電源構成の変更や産業構造の大きな再編成を余儀なくされ、ややもすれば経済活動を停滞させる懸念や、光熱費が上がるなど個人生活活動も制限されるイメージもあります。
本プロジェクトでは、2050年の目指す社会像として、日本国が世界に先駆け科学技術の発展とともに新しい産業を創出し発展させ、国の繁栄経済成長につなげてゆく「明るく豊かな社会」かつ地球環境に調和する「カーボンニュートラル社会」を両立できる社会像を目指しています。
2.2 定量的評価体系
将来の社会の姿を評価、分析する手段として、一般均衡モデル解析や、数理線形最適化計算を用います。これは科学的根拠に基づき、財やデバイス、装置、システムのコストパフォーマンスを定量的に数値化し、その数値を例えば市場の需要と供給のバランスから市場導入量をシミュレーションするものです。より精緻に予測するには、科学的根拠に基づくコスト/パフォーマンス計算や製品寿命、仕様、製造条件などの精緻な数値が必要になります。
本プロジェクトでは、特にCO2低減技術の核となる技術の水素(電解製造、貯蔵、輸送、発電)、二酸化炭素回収・貯留(CCS : Carbon dioxide Capture and Storage)、回収・貯留・再利用(CCUS : Carbon dioxide capture, Utilization and Storage)、直接大気二酸化炭素捕集(DAC:Direct Air Capture)、蓄電池をコア技術とし、コア技術のコストエンジニアリング手法による定量的技術評価(TEA:Techno-Economic Analysis)、リサイクル、リユースを考慮した製品寿命評価(LCA:Life Cycle Assessment)を精緻に行うことを特徴としています。
2.3 総合知に基づくシナリオ開発と加速的な移行戦略提案のしくみ
総合知に基づくシナリオ開発と加速的な移行戦略提案のために、各パートの専門家グループを作りプロジェクトを形成しています。各グループは単独でテーマを深堀、研究開発を進めながら、グループ間で有機的に連携し、シナジー効果を生み出していきます。
コストエンジニアリングによる材料レベルからのコスト解析からモデル定量解析まで、さらにシナリオ構築を経てステークホルダーへのアウトリーチまで、迅速に政策提案や技術戦略を提言できるしくみを構築しています。また、それぞれのグループで最新のデータや情報を取り込むことで、最新のシナリオを共有、ロバスト性に富むしくみになっています。各グループで人材育成も含め、独自に目的、目標を設定して推進します。